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他大学 (2008年度)

  • 集中講義(前期):九州大学大学院理学府物理学専攻

物理学特別講義 VII
「確率過程・特殊関数・ランダム行列」
香取眞理
 

2008 年 7 月 28 日(月)−30 日(水)

28 日 10:30-12:00, 13:00-14:30, 14:50-16:20

29 日 10:30-12:00, 13:00-14:30, 15:00-16:30(談話会)

30 日 10:30-12:00, 13:00-14:30, 14:50-16:20

講義概要

非平衡統計物理学ではランダムウォークやブラウン運動を 基礎とした数理モデルが多く用いられる.一例に,融解や 濡れ転移あるいは不整合界面の揺らぎを記述するために M. Fisher によって導入された vicious walk model (非交叉 ランダムウォーク)がある.ここでは,このモデルの連続極限 である非衝突ブラウン運動について講義する. 量子力学で習った特殊関数はブラウン運動やその条件付き 過程を記述するにも有用であることや,非衝突ブラウン運動は ランダム行列の固有値の動力学であり, また自由フェルミオン系の類似であることを解説したい. 具体的な講義項目は以下のようである.

1.ブラウン運動とその条件付き過程

 1.1 拡散方程式とブラウン運動(BM)

 1.2 BMの反射原理と吸収壁BM

 1.3 ブラウン彷徨過程と 3 次元ベッセル過程)
2. 3 次元ベッセル過程

 2.1 半マルチンゲールと伊藤の公式

 2.2 d 次元ベッセル過程の確率微分方程式

 2.3 2×2行列値BMとその固有値過程

 2.4 2×2行列式過程と 3 次元ベッセル過程
3.Karlin-McGregor の公式と非衝突BM

 3.1 Karlin-McGregor の公式

 3.2 非衝突BM

 3.3 シューア関数とセルバーグ積分
4.ランダム行列理論と非衝突過程

 4.1 行列値BMの固有値過程

 4.2 Bru の定理と Dyson 模型

成績は出席とレポート課題による.

談話会 (7 月 29 日(火)15:00-16:30)
「非衝突ブラウン運動・多重エルミート関数・ランダム行列」
香取眞理

アブストラクト

1 次元上に N 個のブラウン粒子を配置し 互いに非衝突という条件の下で運動させる.この非衝突 ブラウン運動は,すべての 2 粒子間にその粒子間隔に 反比例する斥力が働く長距離相互作用系であり, N×N のエルミート行列に値をもつ行列値ブラウン運動の N 個の実固有値の運動(Dyson 模型)と等価である. 本講演では,粒子数 N が有限のとき,任意の初期粒子配置 に対して,この系の時空相関関数は一般に行列式で 与えられること,そしてその行列式は多重エルミート関数 とよばれるエルミート多項式の拡張(多変数パラメータ 依存性をもつ)で表される積分核で指定されることを導く. その結果,初期配置として特にランダム行列の固有値分布として よく知られたものを選ぶと,ランダム行列の特性多項式 のアンサンブル平均に対する情報が得られることを 示す.無限粒子極限についても議論したい.


  • 集中講義(後期):東京大学大学院数理科学研究科

「応用数理特別講義V」

応用数理特別講義V 香取眞理(中央大学理工学部)冬学期

「趣旨」

ベッセル過程や彷徨過程は,条件付き1次元ブラウン運動としての表現と高次元拡散過程の動径方向への射影としての表現を持つ.この構造の多変数拡張として,非衝突拡散過程を論ずる.非衝突拡散過程は,非衝突条件を課した多粒子過程としての表現と,行列値拡散過程の固有値部分としての表現を持つことになる.また,非衝突拡散過程は,時間的に斉次な場合は行列式過程,非斉次な場合はパフィアン過程の典型例になっており,それがゆえに無限粒子極限を定めることができる.ランダム行列,フェルミ統計力学,可積分系との関係も議論したい.

「内容」

1.ブラウン運動とその条件付き過程

2.ワイル領域内の条件付きブラウン運動の優調和変換としての非衝突過程

3.行列値拡散過程の固有値部分としての非衝突過程

4.時間的非斉次過程と Harish-Chandra の積分公式

5.行列式過程と spectral projection

6.パフィアン過程と Riemann-Liouville の分数微積分

「参考文献」

(1)香取眞理,種村秀紀,「ランダム行列と非衝突過程」,小嶋泉編, 『数理物理への誘い6』, 第6話,遊星社,2006年.

(2)M. Katori and H. Tanemura, Noncolliding Brownian motion and determinantal processes, Journal of Statistical Physics, 129 (2007), 1233-1277.

「評価方法」

レポート問題を課す.