katori_top_2011

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私は揺らぎの物理と数学に興味があります.量子力学での揺らぎは不確定性から生じる原理的なものであり,演算子の非可換性によって表現され,波動関数で記述される非局所的な状態(量子状態) を保つことになります.他方,統計力学での揺らぎは,『アボガドロ数という膨大な数の原子や分子からなる系に対しては,ミクロな状態を完全に指定し制御することは無意味であり,情報の縮約によって生じるランダム性こそが大切である』という見方から発生するものです.統計力学の揺らぎを使うと,環境変化に対する系の応答を表すことができます.このように,量子力学における揺らぎと統計力学における揺らぎとは,まったく別物のように見えますが,無限個の粒子の量子状態を扱う量子場の理論や,散逸を伴う非可逆な現象を扱う非平衡統計力学を考えていくと,不思議なことに両者の違いは薄れ,むしろ両者に共通する揺らぎの本質論に迫らなければならなくなるのです.

2010 年度の卒業研究でも,揺らぎをテーマとします.特に次の2つの研究テーマを予定しています.

[A] ランダム・ウォークを量子化した量子ウォーク模型

[B] 交通流模型で厳密に解ける例であるゼロ・レンジ模型

配属後の各自の希望に応じて2つのグループに分かれて,それぞれのテーマを研究してもらおうと思っています.

このところ毎年,11 月の大学祭では卒研生が中心になって研究発表(パネル展示)をしています.来年度も大いに活躍してもらうつもりです.

研究室では大学院生たちや助教の小林奈央樹氏と一緒に

(1) ランダム行列理論と行列値確率過程, フェルミ場の量子論

(2) 臨界現象・フラクタルパターンと Schramm-Loewner 方程式

(3) グラフ理論と格子上の統計力学模型

(4) 非衝突過程,交通流模型,砂山崩し模型などの非平衡統計力学模型の数理

(5) 量子ウォーク模型と群の表現論・特殊関数論

(6) 自然界や社会現象に見られるべき乗分布や対数正規分布および極値統計

などについて研究しています.上述の卒研生の発表内容とともに,研究室のホームページ (トップページ) に活動記録や資料 (写真や pdf.file) がありますので,参照ください.

私の研究室での卒研および大学院進学に興味ある人は,直接私を訪ねてください.(居室:1 号館 5 階 1538 室, e-mail: katori@phys.chuo-u.ac.jp) .卒研の具体的な計画や大学院での研究課題について、相談しましょう.

香取眞理