katori_top_2012
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物質は原子や分子が1モルあたり約 6 × 10^23 個(アボガドロ数)集まってできています.このように膨大な数の粒子の集団が,どうして安定に存在し得るのかを解明するのが統計力学です.学部での授業では,理想気体や常磁性体のモデルなど,粒子間に相互作用がない場合を用いて統計力学が論じられることが普通ですが,相互作用がある場合は一般に統計力学は難しくなります.それでも,粒子間に相互作用が及ぶ距離が短い場合で,熱平衡状態のときには,Dobrushin-Lanford-Ruelle の理論が確立しています.しかし,相互作用がべき乗的な長距離力である場合,相転移点近傍で粒子が協同現象を起こしている場合,あるいは非平衡の場合(例えば,マクロな流れがあると遠く離れた粒子が互いに相関を持つ)には,統計力学の成立そのものを保証する一般的な理論はありません.
私は最近,強く相互作用する多粒子系の問題を厳密に解く方法(可積分系の研究成果)を用いて,統計力学を研究することを行っています.この方法が適用できるのは(残念ながら今のところ)古典的な平衡系では 2 次元系,量子平衡系では 1 次元系,非平衡系では時空 2 次元系(時間 1 次元+空間1次元)に対してだけです.このように「低次元の話」ではありますが,確率論の極限定理やマルチンゲールの理論,特殊関数論,(多変数)複素関数論, 群の表現論,ランダム行列理論,ゲージ理論,共形場理論,ゼータ関数論などと関連が深く,数理物理学のメインテーマとなっています.
2012 年度の卒業研究では,1 次元量子系の厳密解について,この分野の第1人者が最近出版した教科書
Bill Sutherland, Beautiful Models, 70 Years of Exactly Solved Quantum Many-Body Problems, World Scientific, 2004
を用いて,皆で研究しようと思います.難しい課題とは思いますが,理論物理学をしっかりと勉強したい人,数学と物理の接点に興味がある人,計算機だけでではなく解析的にも(紙と鉛筆と頭で)研究を進めたい人,を募集します.(毎年11 月の大学祭では,卒研生が中心になって研究発表(パネル展示)をしています.来年度も大いに活躍してもらうつもりです.)
研究室では卒研生や大学院生諸君と一緒に
(1) ランダム行列理論と行列式確率過程(vicious walk models)
(2) ゲージ理論と量子戸田格子
(3) 臨界現象・フラクタルパターンと Schramm-Loewner 方程式
(4) 交通流モデルや界面成長モデルの厳密解
(5) グラフェンと量子ウォーク・モデルに見られるディラック電子系
(6) リーマン・ゼータ関数と統計力学
などについて,勉強と研究をしています.
私の研究室での卒研および大学院進学に興味ある人は,直接私を訪ねて下さい.(居室:1 号館 5 階 1538 室,e-mail: katori@phys.chuo-u.ac.jp).
卒研の具体的な計画や大学院での研究課題について,相談しましょう.
香取眞理