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2014 年度卒業研究案内

私は揺らぎの物理と数学に興味があります. 量子力学での揺らぎは不確定性 から生じる原理的なものであり, 演算子の非可換性によって表現され, 波動関数で記述される非局所的な状態(量子状態)を 保つことになります. 他方,統計力学での揺らぎは, 『アボガドロ数という膨大な数の 原子や分子からなる系に対しては,ミクロな状態を完全に 指定し制御することは無意味であり, 情報の縮約によって生じるランダム性こそが大切である』 という見方から発生するものです. このように,量子力学における揺らぎと統計力学における 揺らぎとは,まったく別物のように見えますが, 無限個の粒子の量子状態を扱う量子場の理論や, 散逸を伴う非可逆な現象を扱う 非平衡統計力学を考えていくと, 不思議なことに両者の違いは薄れ,むしろ両者に共通する 揺らぎの本質論に迫らなければならなくなるのです.

2014年度の卒業研究では,相転移・臨界現象について取り上げます. これは,物性物理学における磁性や超伝導などの相転移現象, 自発的対称性の破れと宇宙の相転移(ヒッグス機構), フラクタル構造に起因する臨界現象, 生態系に見られる群れの生成や自律分散システム など,様々な現象と関連するトピックスです. そしてそこでは,揺らぎが重要な役割を果たします. 出来れば英語の教科書を使って, 繰り込み群や共形場理論 といった高度な理論に至るところまで勉強と研究をしたいと思っています.

毎年11 月の大学祭では,卒研生が 中心となって研究発表(パネル展示)を しています.ちょうど大学祭の時期は前期の勉強が一通り 済んで後期の研究課題に取り掛かり始める時で,毎年 皆,面白い発表パネルを作ってくれます.

私の研究室での卒研および大学院進学(下記参照)に興味ある人は, 直接私を訪ねて下さい. (居室:1 号館 5 階 1538 室,e-mail: katori@phys.chuo-u.ac.jp). 卒研の具体的な計画や大学院での研究課題について 相談しましょう.


大学院での研究案内

私は最近,強く相互作用する多粒子系の問題を 厳密に解く方法(可積分系の研究成果)を用いて, 統計力学を研究することを行っています. この方法が適用できるのは(残念ながら今のところ) 古典的な平衡系では 2 次元系, 量子平衡系では 1 次元系, 古典的な非平衡系では時空 2 次元系(時間 1 次元+空間1次元) に対してだけです. このように「低次元の話」ではありますが, 確率論の極限定理やマルチンゲールの理論, 特殊関数論,(多変数)複素関数論, 群の表現論,ランダム行列理論,ゲージ理論,共形場理論, ゼータ関数論などと関連が深く, 数理物理学のメインテーマ となっています.

研究室では卒研生や大学院生諸君と一緒に

(1) ランダム行列理論と行列式確率過程

(2) 臨界現象・フラクタルパターンと Schramm-Loewner 方程式

(3) 交通流モデルや界面成長モデルの厳密解

などについて,勉強と研究をしています. 研究室のホームページ に活動記録や資料(写真や pdf.file)がありますので 参照下さい.


2013年11月 香取眞理