中大物理 香取研・脇田研合同セミナー
中大物理 香取研・脇田研合同セミナー [pdf.file]
講演者:深井 洋佑 氏(東京大学大学院理学系研究科物理学専攻)
題 目:Kardar-Parisi-Zhang普遍サブクラスと「内向き成長」界面
日 時:2016年12月6日(火) 16:30〜18:00
場 所:中央大学後楽園キャンパス 理工3号館3階3300室 (〒112-8551 文京区春日1-13-27;東京メトロ丸の内線, 南北線の「後楽園駅」 または都営地下鉄大江戸線, 三田線の「春日駅」から徒歩5分)
概 要: ゆらぎながら成長する界面では,多くの例でゆらぎの大きさの成長則が べき乗則に従い,その指数によっていくつかの普遍クラスに 分類できることが知られてきた[1]. このような普遍クラスのうち,最も基本的なものの一つとして, Kardar-Parisi-Zhang (KPZ)方程式[2]に代表されるKPZ普遍クラスがある. いくつかのモデルに関する厳密解[3]や液晶電気対流と呼ばれる系での実験[4]から, KPZクラスに属する界面のゆらぎの性質は界面初期形状に依存する, ということが示されてきた.例えば直線から成長する平面界面と, 一点から成長する円形界面では,異なる普遍的な界面ゆらぎを示す. これらの結果は,KPZクラスの中に「サブクラス」と呼ぶべき構造が あることを示している.しかし,なぜこのような構造が存在するか, どのような条件が界面が属するサブクラスを決めるのか, ということは明確に理解されていない. このような問いに実験から示唆を与えるため,我々は, 任意にデザインした初期条件からの界面成長過程を, 液晶電気対流系で調べることのできる実験系を構築した. この系を用いて,リング形の初期条件から「内向き」に成長する界面を調べ, この界面が,一点から外向きに成長する円形界面とは異なり, 直線界面と同じサブクラスの性質を示す,という結果を得た[5]. これは「初期条件に曲率があれば円形界面と同じサブクラスに属する」 という直感的な理解が十分ではなく,曲率の符号もサブクラスを 決める上で重要である,ということを示している. KPZ普遍クラスに属するモデルを用いた数値計算でも, 実験結果と合致する結果を得ている. 本セミナーでは,これまでKPZサブクラスに関して得られてきた結果を概観 した後に,実験的・数値的に得られた内向き成長界面のゆらぎの性質に ついて述べ,なぜこの界面が円形界面と異なるか簡単に考察したい. 加えて,同じくリング形の初期条件から外向きに成長する界面が どのようなサブクラスの性質を示すか,数値的な結果から見えてきた 描像を紹介する.
[1] A.-L. Barabasi and H. E. Stanley: Fractal Concepts in Surface Growth (1995). [2] M. Kardar, G. Parisi and Y.-C. Zhang: Rhys. Rev. Lett., 56, 889 (1986). [3] K. Johansson: Comm. Math. Phys., 209, 437 (2000); M. Prahofer and H. Spohn: Physica A, 279, 342 (2000) など. 例えば I. Corwin: Rand. Mat. Th. Appl., 1, 1130001 (2012) などに レビューされている. [4] K. A. Takeuchi and M. Sano: Rhys. Rev. Lett., 104, 230601 (2010); K. A. Takeuchi et al.: Sci. Rep., 1, 34 (2011); K. A. Takeuchi and M. Sano: J. Stat. Phys., 147, 853 (2012). [5] Y. T. Fukai and K. A. Takeuchi: arXiv:1611.00650 (2016)
問い合わせ先:中大・理工・物理 香取 眞理 TEL: (03) 3817-1776 E-mail: katori@phys.chuo-u.ac.jp 居室 理工1号館5階 1538室
問い合わせ先:中大・理工・物理 脇田 順一 TEL: (03) 3817-1788 E-mail: wakita@phys.chuo-u.ac.jp 居室 理工1号館5階 1328室