中央大 脇田研・香取研合同セミナー 山田 雄平 氏
中央大 脇田研・香取研合同セミナー[pdf.file]
講演者:山田 雄平 氏(早稲田大学先進理工学研究科 山崎研究室 D2)
題 目:確率モデルが示す相転移と臨界現象の普遍性について
日 時:2017年7月3日(月) 17:30〜19:00
場 所:中央大学後楽園キャンパス 理工1号館5階1530室 (文京区春日1-13-27;東京メトロ丸の内線, 南北線の「後楽園駅」, または, 都営地下鉄大江戸線, 三田線の「春日駅」から徒歩5分)
概 要:
相と呼ばれる系の巨視的な状態が,系を制御するある変数の変化に伴い, ある値を境に急激に変化する現象は相転移と呼ばれる. 系を微視的な要素の 集まりとして捉えたとき,相転移はそれら要素が集まったときに全体として示す 協力現象として理解される[1]. そのような観点からの相転移の研究としては, イジング模型に代表されるスピン系での議論が盛んで多くの結果が得られて いるが,単に協力現象が示す巨視的な状態の変化について議論したいとき には,よりシンプルかつ一般性のある確率モデルが数多く存在する. それら のモデルを用いて相転移とそれに伴う臨界現象の普遍性について議論する ことは,現実の世界の様々な場面で見られる相転移的な現象を理解するの に役立つ. この観点から,発表者は特に二つの相転移を示す確率モデルに 注目し,相転移としてのふるまいがどのような普遍性を持つかについて研究 している.
一つ目の研究では,パーコレーションと呼ばれる巨視的なつながりの相転移 を示すモデルに注目している. パーコレーションは一般にはネットワーク上で 定式化され,ノード間にあるルールに従いボンドを加えていったとき,最大の クラスターがどのように成長するかを議論する. 近年,ボンドの追加にある種 の選択性を導入することで,最大のクラスターが急激に成長するふるまいが 注目を集めている[2]. 本発表ではクラスターの成長をクラスターの確率的な 合体過程と見なしたとき,最大のクラスターの急激な成長が実現されるため の条件について議論する.
二つ目の研究では,ファイバーバンドルモデル(FBM)と呼ばれる破壊の相転移 を示すモデルに注目している. FBMでは,ファイバーと呼ばれるばねの束 (バンドル)に外力を加えたとき,ファイバーがどのように破壊するかを議論 する[3]. 通常のFBMでは,ファイバーはランダムな長さで破壊するとして 議論が行われる. 本発表ではファイバーは全て同じ長さで破壊するとし, 代わりにバンドルの構造にランダムネスを与えるモデルを考える. このモデルはある面では通常のFBMとは大きく異なったふるまいを する一方,ある臨界指数は通常のFBMと同一の値を持つことがわかった.
[1] 田崎晴明, 統計力学II, 培風館, 2008.
[2] D. Achlioptas. R. M. D’Souza, and J. Spencer, Science {\bf 323}, 1453 (2009).
[3] S. Pradhan, A. Hansen, and B. K. Chakrabarti, Rev. Mod. Phys. {\bf 82}, 499 (2010).
問い合わせ先:中大・理工・物理 香取 眞理, 脇田順一
TEL: (03) 3817-1776, -1788
E-mail: katori@phys.chuo-u.ac.jp, wakita@phys.chuo-u.ac.jp
居室 理工1号館 1538室, 1328室