2017年度 第4回 中央大学物理学科談話会

2017年度 第4回 中央大学物理学科談話会[file.pdf]

講演者:横井 喜充 氏(東京大学 生産技術研究所)

題 目: 乱流による輸送の促進と抑制

日 時:2017年9月13日(水)16:30〜18:00

場 所:中央大学後楽園キャンパス3号館3階3300号教室

    (〒112-8551 文京区春日1-13-27;

    東京メトロ丸の内線, 南北線「後楽園駅」,

    または都営地下鉄大江戸線, 三田線「春日駅」から徒歩5分)

概 要:

大きなReynolds数の流れは非線型性のため乱流状態となる. 乱流による輸送(渦粘性,渦拡散,乱流磁気拡散など)は 分子的輸送に比しておよそReynolds数倍だけ大きくなるため, 系の実効輸送を支配する.現象の時空発展を理解するため には乱流相関量(例えばReynolds応力,乱流起電力など)の 評価が重要となる.乱流相関量と乱流輸送係数の評価には さまざまなレベルがある.乱流相関の経験的モデリングと パラメータとしての輸送係数という組み合わせを超えて, 自己無撞着に乱流輸送を評価するには,乱流場と平均場 のダイナミクスを同時に考慮せねばならない.強い非線型性 と非一様性を併せもつ乱流場で,基礎方程式から乱流輸送 を評価する試みを紹介する.

乱流による輸送の促進はゆらぎの強さすなわち乱流エネルギー と直結し,乱流中の不均一な大構造(平均速度勾配, 大規模磁場,疎密構造)を消失させる方向にはたらく. ところが,天体や地球物理現象など,回転や大規模磁場, 不均一な密度分布が普遍的に存在する状況では, それらの効果で対称性が破れ,乱流自体が構造をもつ. そこでは,乱れによる輸送促進だけではなく,乱れによる 輸送抑制が生じ,大規模構造が形成・維持される可能性がある. 輸送抑制や構造形成を論じるには,乱流エネルギーによって 表現される乱れの強さの情報だけでは足りず,乱流ヘリシティ に代表される乱れの構造の情報が必要となる.

このようなアプローチから乱流輸送を議論した最近の 幾つかの例:(i)非一様なヘリシティと絶対渦度 (回転と相対渦度)の結合による大規模流れの 自発的生成;(ii)非一様な大規模流れによって 誘起される乱流起電力による恒星ダイナモ・モデル; (iii)非線型かつ非一様な乱流場での高速磁気リコネクション; などを紹介する.

参考文献

横井・下村・半場・岡本(共編)『乱れと流れ』 (培風館, 東京, 2008).

N. Yokoi, ``Cross helicity and related dynamo," Geophys. Astrophys. Fluid Dyn. 107, 114-184 (2013).

N. Yokoi and A. Brandenburg, ``Large-scale flow generation by inhomogeneous helicity," Phys. Rev. E 93, 033125-1-14 (2016).

N. Yokoi, D. Schmitt, V. Pipin, and F. Hamba, ``A new simple dynamo model for stellar activity cycle," Astrophys. J. 824, 67-1-12 (2016).

F. Widmer, J. Buchner, and N. Yokoi, ``Sub-grid-scale description of turbulent magnetic reconnection in magnetohydrodynamics," Phys. Plasmas 23, 042311-1-14 (2016).

F. Widmer, J. Buchner, and N. Yokoi, ``Characterizing plasmoid reconnection by turbulence dynamics," Phys. Plasmas 23, 092304-1-15 (2016).

問い合わせ先: 中大・理工・物理 香取眞理 e-mail: katori@phys.chuo-u.ac.jp tel: (03) 3817-1776(直通) tel: (03) 3817-1767(物理準備室) fax (03) 3817-1792(物理準備室)