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2017 年度卒業研究案内

私は揺らぎの物理と数学に興味があります.量子力学での揺らぎは不確定性から生じる原理的なものであり,統計力学での揺らぎは情報の縮約によって生じるランダム性から発生するものです. このように,量子力学における揺らぎと統計力学における揺らぎとは,全く別物のように見えますが,無限個の粒子の量子状態を扱う量子場の理論や,散逸を伴う非可逆な現象を扱う非平衡統計力学を考えていくと,不思議なことに両者の違いは薄れ,むしろ両者に共通する揺らぎの本質論に迫らなければならなくなります.

そのような状況の下,私は助教のセルヒオ・アンドラウス氏 (私のところの大学院修士課程を出た,中大物理の先輩です) と一緒にランダム行列理論に関係した非平衡統計力学モデルの研究をしています.ランダム行列というのは成分が乱数 (確率変数) である行列 (つまり「乱行列」) のことです.こうなると何もかもハチャメチャでめちゃくちゃになってしまいそうですが,不思議なことに,行列のサイズを無限大にしていくととても美しい確率法則が現れるのです.この法則は綺麗なだけでなく普遍的で,さまざまな物理現象を説明する上で有効なのです.実際,原子核理論,ゲージ理論 (量子色力学),乱れた電子系 (アンダーソン局在),スピングラス,量子輸送現象,量子カオス,対数ガスの統計力学,粗い界面の成長,交通流モデルなど,物理学での応用は幅広いものがあります.(数学の分野でも数論,数え上げ組合わせ論,群の表現論,多変数統計学,工学の分野でも通信理論やネットワーク理論,その他,経済・社会学,生物学,生態学の分野でも応用が広がっています.)

ランダム行列と非平衡統計力学(確率過程)に関する 解説書も最近出版されるようになり,私も1冊執筆しました. 卒研では,これらの教材を使って, ランダム・ウォークやブラウン運動などの基礎から初めて, ランダム行列理論の研究を目指します.

大学院への進学を考えている人も多いと思います. 今回の卒研課題として(すこし難しいかもしれませんが), 私たちがまさに研究している内容を選んだ理由の一つは, 大学院に進学する人が,卒研から円滑に 大学院での研究に移行できるようにしたかったからです. (ゆくゆくは)'''理論物理学の ホットな研究課題に挑戦したい'''と思っている人を歓迎します.

私の研究室での卒研および大学院進学(下記参照)に興味ある人は, 直接私を訪ねて下さい. (居室:1 号館 5 階 1538 室,e-mail: katori@phys.chuo-u.ac.jp). 卒研のより具体的な計画や大学院進学について 相談しましょう.


大学院での研究案内

研究室では、大学院生や助教のアンドラウス氏と一緒に
(1) 確率過程,特にランダム行列理論に関係する行列式確率過程とその拡張
(2) 臨界現象・フラクタルパターンと Schramm-Loewner 方程式 (SLE)
(3) 非平衡相転移を示す交通流モデルや粗い界面成長の数理モデル
などについて,勉強と研究をしています.

卒研説明会のときに見せたスライドを添付しておきます [slides].


2017年3月 香取眞理